【レスボス島・救命胴衣の墓場】
レスボス島北部の地域には、
難民が使用した救命胴衣が一ヶ所に集められて放置されている場所がある。
通称「救命胴衣の墓場・Lifejacket Graveyard」
そこには色あせたライフジャケットとゴムボートが山積みになっていた。
あたりは驚く程音がなくて、切ないくらいだった。
ただ「ある」だけなのに、それを着ていた実際の人々が目の前にいるような気がした。
誰がどうして墓場と名付けたのだろうか。悲しみを表現するため?海で亡くなった人への弔い?
きっとそれに答えはなくて、見た人たちそれぞれの感じたことや意味づけに委ねられていると思う。
ライフジャケットは、ただそこに存在しているだけ。
しかしむしろ、この光景に僕らは積極的に意味付けしなくてはいけないような気がする。
ライフジャケットが色あせていた。
2016年のEU難民危機では世界中が難民の動向に注目し、日本でもニュースが流れた。3年がたった今、テレビでは難民のニュースはなかなか流れない。
ライフジャケットのしっかりしたオレンジ色が白くなっていくように、人々の記憶からもこの島の現状が消えつつあるように感じる。
今もこの島には、より安全な暮らしを求めて亡命してくる人々がいる。
しかし2016年のEUトルコ合意により、「難民はEU圏内の最初に入国した地域で難民登録をしなくてはいけない」と規定されたために、多くの人びとが島で足止めされている。
収容人数を大きく超える人びとがモリア難民管理センターで過ごしており、治安・教育・衛生など、あらゆる生活に重要な要素で課題を残している。
この現状はピーク時と比べると落ち着いてはいるが、ゼロではない。
人々の記憶から消えつつある中で、もう一度そうした現実を認識する必要があると、山積みの救命胴衣から感じた。
今日の様子を動画にまとめたので、是非ご覧くださいね。
墓場にある記憶は、長く月日が経てば生きている人の意識から薄れてしまう。
この墓場にある過去と今が、僕たちの記憶でしっかりと色を持ちますように。