2019/12/20:1期生慶樹のレバノンレポート

報告:1期生 鈴木慶樹

Lebanon Beirut Economic Crisis And Humanitarian Response
レバノンという素晴らしい国の一面。

経済危機にさらされているレバノンでは、毎日のように政府に対する抗議デモが続いていた。

内戦後の宗派に合わせた独特の政治体制は政治汚職を常態化し、一部の政治家が富を奪い上げている。

内戦後の街の再開発にSolidereという建設会社が名乗り出たが、この建設会社は政府と絡みついており、「Stop Solidere」という横断幕を掲げて内戦当時の銃弾が残った建物を保持する団体があったり、壊された窓ガラスにはFワードと共に落書きされていた。

その政治汚職に加えて海外資本の流入によってドルが国から逃げていき、経済に負担がさらにのしかかった。

というのが抗議デモ者の主張。

先々月ではWhatsAppにすら課税をすると発表した政府に民衆が抗議をし、首相が辞任。16日に新首相が発表される予定だったが、前首相のハリリが再就任するのではないかと危惧した主にシーア派の民衆がヒズボラの一部勢力と抗議デモも起こし再び延期になった。

その際には十数名の負傷者が出たらしい。

「この経済の状況を打開するには、政治体制を総替えするしかない。アラブの春のように、革命しか残されていないんだ。」そう語る民衆もいた。

クレジットカードも使えないし、レストランも空いていない店が多い。

多くの店が給料を半減したり従業員を減らしてなんとか店を保っている。若者の失業率はなんと37%だ。

そんな中でレバノン政府は多くの難民を受け入れている。シリアからだけじゃなく、パレスチナやイラクからの難民もだ。

レバノン政府の難民支援の政策は、「極力帰ってもらう」だと思った。

今年の4月24日からは新政策で「違法に」入ってきた外国人を元の場所に送り返す制度をとっている。そもそも難民として認めない姿勢だ。また、労働許可を持たない外国人を雇う雇用者に罰金を与えている。

そして何より、レバノンの難民キャンプでは、テントの修理が認められていない。ごくわずかな修理は認められているのだが、高さ制限や大きさ制限などが厳しく、規定に反したテントは撤去されてしまう。

僕はトルコ・レスボス島・レバノン・ヨルダンと見てきて、国の余裕というものがいかに重要かということをしみじみと感じつつある。

国連がいかに頑張っても、NGOがいかに現場で尽力を尽くしても、国の立場が変わらなくては、どうしようもない。

そしてレバノンは、その余裕がまったくない。そう感じた。

母国から逃げてきた人たちは決して逃げる国先を選べない。

自分の国で沢山の花が咲いた大きな庭に住んでいた人が、内戦の影響で避難して、冬には雪が積もる極寒の地でテント生活を8年間続けてきたらどんな気持ちになるだろう。

彼らの経験と感情は予想のずっと先にあるものなんだろうと思う。

僕はそうした経験をした人たちと関わっているという事実。

だからこそ、想像をしなくてはいけない。

あの時どういう気持ちだったのか、今どんなことを思っているのか、何に嬉しくなり、どういうものに悲しく怒りを覚えるのか。

時に話し合い、相手の表情を見て。そして常に考える。

レバノンの想像を絶する難民の方々の生活を目の当たりにし、自分に足りないものを実感した。

そしてレバノンには、そうした頭を動かし続けた人たちに出会えた。

事務所での仕事、NGO視察の同行や、パレスチナ難民キャンプでの折り紙ワークショップなどさまざまな学びの機会をいただいて、本当に本当に!感謝が尽きない。美味しいご飯にも何度も連れて行ってもらっていろんな話も伺うことができた。

その人たちと5日間関われて、自分の甘さにも気づいたし、心理社会的ケアのことについても知ることができた。なんならちょっと卒業後の進路さえ見えた気がする。

レバノンでの出会いに感謝して、これからも学んで行こう。