2019/12/15 1期生慶樹のレバノンレポート

Play Back Theaterとの出会い

レバノンで活動する日本人の方とお話をさせてもらって、自分がやりたいことは【心理社会的サポート】にものすごく近いのかもしれないとわかった。

心理社会的サポート(Psychosocial Support)っていうのは、簡単に言うと、何か災害などで精神的なダメージを負った人々が、そのおった際の心のけがを克服することを手助けすること。

相談に乗ってくれた方は、長くシリア人難民の子供に対する心のケアをしてきた方で、自分の話す即興劇を使ったケアや多文化共生への貢献にものすごく真摯に聞いてくれた。

そこで紹介してくれたのが、
プレイバックシアター(Play Back Theater)。

これはただの演劇とは違い、
ファシリテータがオーディエンスの物語を引き出し、それを役者たちが即興で演劇をする。

オーディエンス自身が、何日もかけて役者となり自分の実体験を演劇することもあるみたいだ。

心のキズを負った人たちは、分析的に3つの段階を踏んで克服していく。
① 安全の確保
② 心のキズと向き合い受け入れる
③ 新しい未来を描き出す

演劇で自分の過去の嫌な場面を創造するというのは、すでに自分の過去を受け止め、その過去に悩む自分に別れを告げる段階で行われるそう。

まあわちゃわちゃいうておりますけども!

紹介されて行ったわけさ。
場所はビブロスというベイルートからバンとバスを乗り継いで北上して1時間ほどの町。

18時から講演だったので、15分くらい前に入ると、やっぱりアジアの顔が珍しいからすぐに注目された。

ファシリテータの人はとてもよく受け入れてくれて、自分が関心があり、紹介をもらって今日来たことを伝えると、講演時間を早めて僕のために優しく教えてくれた。

自分はトルコにきてからの2ヶ月と、明日行うワークショップへの不安を語った。

「それじゃあ、その場面を見てみましょう。」

次の瞬間、目の前に立つ四人の役者がふわりと舞台を満たして、「ぼく」と「NGOの先輩上司」が現れた。

彼らの演技は本当にすごくて、まるで本当にこれまでの2ヶ月の景色を振り返っているようだった。

最後にワークショップへの不安が立ち現れるシーンで終わり、4人はまた元の役者に戻り、ぼくの目の前に立った。

自分の過去がカタチ作られて、自分の明日のワークショップの不安をよりはっきりと一歩引いた状態で認識するような感覚になった。初めての経験で感じたことだから、この感覚は大事にしよう。

そしてファシリテータがぼくに問いかける。
「How did you feel?」

1時間半の本公演は、いろんな物語で満たされた。

照明と音楽がナイトクラブみたいなバスに乗って変な気持ちになったスペイン人の女性の物語。

貧困で学校に通えない子ども時代を過ごし、昨年のトリポリでの自爆テロで兄の子ども(兄が亡くなったため引き受けていた)を亡くした椅子職人のおじいさんの物語。

末期の癌を持つ父親と昔よく喧嘩をしたレバノンのお姉さんの物語。

それら全てを繊細に表現する役者たち。あっという間の時間だった。

すごいと思う一方で、もっとオーディエンスが自分の物語を語りやすく工夫できるなと思う場面はあった。これはいろいろと変化させることができるということだな。

この演劇は、ただの演劇じゃなく社会的な背景や歴史も知っておかないといけないと、後に聞いたら役者の人は教えてくれた。

こんな感じでプレイバックシアターの初体験を終えた。

今回の出会いがあったからこそ、心理社会的ケアのことも知れたし、その中で演劇(即興劇)を使ったケアの立ち位置も知れた。

帰国したらどんどん深みにハマりたいし、難民支援としての学習環境に実践していきたい!と思えるような出会いでした。

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