第12回(7月4日) コルブの経験学習について考える。

第12回目のゼミで。前期終わりにむけて、少しずつパターンが作れてきたかな。ゼミだけでは、なかなかゼミ生とゆっくり話せないのだけれど、ゼミで取り組む活動のおかげで、学生たちが研究室にきてくれ個別に話す機会があるので、少しずつゼミ生との距離も近ってきました。

今日は、コルブの経験学習についての輪読。ゼミ生たちとがっつり理論や実践を議論していけるようになりたいです。

写真:滝川さん(@NTCインターナショナル 技術本部 平和構築部)からモロッコのお土産のデイツ。おいしかった!

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今日のゼミは、文献の輪読を行いました。輪読を始める前に、「なぜ輪読をするのか」(byけいと)「輪読とは何か」(by ホヨン)からの質問があり、はっとさせられました。本を「読む」のは、難しいことではなく、読んで「なるほど」ってわかればそれで終わり。しかし「輪読」というのは、「多角的」「批判的」「創造的」「内省的」に「読む」。こうやって「読み方」を学んでいくこともゼミとして貴重な経験だな、と思いました。そういえば、私も大学生の頃、本を読んで「さぁ、議論して」と言われて意味がわからなかったのを思い出しました。

ゼミで共有する文献をもとに、同じ事象を共有しそこから広げ、深めていく楽しさ(=研究)をゼミ生みんなで作り上げていければいいな、と思いました。

さて、本日はコルブの経験学習についての文献を読みました。確か第10回目のゼミで、ガジアンテップ大学との異文化間交流の体験から、内省→教訓が十分に引き出せていないということが問題意識として共有され、そこから「経験からいかに学ぶのか」についての理論を学ぼう!ということでこちらの文献に入りました。

輪読担当をしてくれたのは、仙波ゆいくん。資料もばっちり用意してくれたので、読んでこなかった(許しがたいが)人もちゃんと議論に入ることができました。議論で私が面白いと思ったのは次の3点。

第一に、理論と実践の乖離については、ゼミ生がそれぞれその経験をしているということ。例にあがったのは第二言語習得。学校教育での学び方、いわゆる「転移モデル」で学習しても、実際の状況で使えないことがあるという。留学生が多いのでこれはみんな「そうだ、そうだ」と納得していました。他にもアルバイトでのマニュアルなどもあげられました。こうすればうまく対応できるというマニュアルも、実際は状況を判断して対応しなければいけないので必ずしもその通りにすればいいというわけではない。にもかかわらず、そのやり方に固執して状況にあった対応ができないということがあるという。いい事例ですね。理論と実践の乖離がなぜ起こるのか、とか話を展開しなかったのですが、ここは我慢。次回の機会に。

第二に、反省的実践家になるためには「学び方を学ぶ(leanring how to learn)」が大事という文章に対して、議論が。「学び方を学ぶってどういうこと?つまり学ぶってことじゃないの?」「自分なりの学び方を作ることじゃない(受験勉強の対策や自己トレーニングなど)」と事例があがりました。この概念がでてきた歴史的背景には、かつて「学ぶ=知識を獲得する」と捉えられていたことがあり、学びの捉え直しの際に生まれてきた概念。こういった「学び」の歴史性を抑えるのも大事だな、って思いました。フレイレの銀行型教育の話とか次にちょっとしたいな、と思いました(メモメモ)。

最後に、経験学習の支援において「ファシリテータの必要性」が述べられていて、なぜ、経験学習においてファシが必要か、ということをしょうたがうまくまとめてくれました。経験をする「私」が「内省」する際には、自分の枠組みで経験を意味づけてしまう。「うまくいった」と思ってもそうではないかもしれない。「失敗した」と思っていても、実はいい方向へと向かうきっかけを作れたかもしれない。自分の枠組みだけで意味づけてしまうと、経験したことから得られる教訓が狭められてしまう可能性がある。だからこそ、その人を少し上にひっぱってくれるような人(=ファシ)がいればいいよね、と結論づけました。その観点からいうと、経験学習におけるファシの役割は(しょうたによると)少なくとも2つ。(1)経験を意味付けれるように言葉などで可視化する。これによって今自分がどういう状況にいるのか、何ができて、何が課題なのかを、見える形にして、次につなげる、(2)高める。ひとりでやるより少し上をめざせれるように(これを、専門用語でZone of proximal developmentという)、ひっぱってあげる(足場をかける、環境をつくる)。いい考察だと思いました。けいじゅがファシリテータとしての学習環境デザインについて研究しているので、今日の議論はヒントがいっぱいあったかと思います。

今日の輪読会の内容がグンっと深まったのは、やはりけいとの一言。けいとの視点はいつもなんとなーく流れていく話を、ぐいっと引き締めてくれる。かなり頼りになるCritical Thinkerです。こうやって疑問や視点をどんどん出し合って、広げ、深めていけたらいいな、と思います。

輪読のあとは、ガジアンテップ大学との異文化交流について全体振り返りをする予定だったけれど、いつも通りタイムオーバー。タイムマネージメントができなくて本当に申し訳ない。これは来週に。そしてゼミ後は、ゼミのマネージメントなどについてそのまま残ってもらい話し合い。滝川さんからのお土産でほっこりしながら打ち合わせできました。