WC報告「新しいことへのチャレンジ」

2018年4月25日 ワールドカフェの実践 <話題提供者:岸磨貴子>

<話題提供者:岸磨貴子>

今回私があげたトピックは「新しいことへのチャンレンジに対して否定的な学生がいた場合、どのように巻き込んでいける?」というものでした。私が授業や実践で大切にしていることは「頭ひとつ分の背伸び」をすることです。学生たちが、「今の自分」にできることを超えて、何か新しいことに挑戦することで、誰かの力をかりて、また誰に力をかしながら学習・発達していけたらいいな、と思っています(私自身も)。こうした学び方は、「何かができるようになる」だけではなく、人との新たな関係性を生み出し、自分が「何ものかになっていく」学びです。

チャレンジは人それぞれ違います。経験も知識もスキルも違うので、誰もがチャレンジできる実践(授業)をすることは簡単ではありません。そこで、私がやるのは「自分たちで活動を生み出す」ということです。そのため、学生たちが「今持っているもの」を土台として、未来の活動を他者と一緒に生み出していくことで「あたまひとつ分の背伸び」ができるように実践(授業)を進めます。しかしながらこのやりかたに、抵抗がある学生もいます。これまでの学校教育では、教師が到達するゴールを示し、それに到達できるように指示を出し、学習者はそれに基づいて進めれば、ゴールに到達できる学びかたに慣れています。
そこで私の対話セッションでは、「新しいことにチャレンジする抵抗感は何か」「どうそれを乗り越えれるか」を学生たちと話し合いました。話し合いをしたのは、えいちゃん、たくみ、いっせい、ゴくん、イムくんです。インターナショナルなメンバーとなりました。

参加者(学生たち)の意見のひとつは、「Comfort Zoneをなかなか抜け出せず排他的になる」ということでした。自分のやり方でできたほうが安心できるが、新しいことに挑戦すると、これまでのやりかたではできなかったり、やりかたがわからなくて不安になったりするため、新しいことに一歩踏み出せない人は多いんじゃないかということでした。他に「私は(挑戦)したいけれど、自分にできることがなかったり、自分がやろうとしていることに対して、相手がNOというと怖いので、なかなか一歩踏み出せない」、「やってみないとわからない。自分も国際協力に関心があるかどういう分野で何からやればいいかわからないので悩む」「価値観が違う人とやるのはぶつかることもある」「チャレンジすることは疲れる」「うまくいかないとき精神的な不安がある」「情報量が少ないと見通しが立てず不安、自信がない」「失敗したら他の人の迷惑になるという負い目、他の人の目が怖い」といった意見もありました。これらの意見から新しいことへのチャンレンジは、うまくいかなかった時の不安、恐怖、疲労といったイメージが同時にあるようでした。「あとで、“だったらもともとのやりかたでやればよかったと思うならば・・・”」という意見もありました。

一方で、新しいことにチャンレジしている人もいるので、「やらなきゃいけない」という気持ちもみんな持っているそうです。たとえば、Learning Loungeでは、英語ができなくてもどんどん留学生に声をかけている人もいるようです。ひとりの留学生は「自分は日本語でうまく表現できないから、と、理由をつけて話かけないけれど、語学が問題じゃないのかな」と振り返っていました。他にも「自分にとってはおもしろくても、相手にとって面白くないかも」「相手に迷惑をかけてしまっているかも」「つまらないと思われるか、と思うと話したくなくなる」と不安になり、一歩踏み出せないこともあるそうです。チャンレジしている人をみると焦るので、結果として「自分と同じ考えににた人と一緒にいてしまう」という自分の状況も客観的にみていました。そして「おれは、彼らとは違う人なんだ」と勝手に意味づけしてしまったりするそうです。

では、それをどう乗り越えれるのか、ということを考えた時でてきたのは、次の2つでした。ひとつは、自分の固定観念や固定化したやりかたを変えることです。もうひとつは、身を置く環境を変えることでした。前者については「学びほぐし(unlearning)」という研究領域あります。これについて研究したいという学生もいました。後者については、新しい環境に身を置くか、もしくは、自分たちでチャンレジし合える環境を作り出すかです。ゼミにおいては、そういった「誰もがチャンレジできる環境」ゼミになるようにひとりひとりが環境の作り手になっていけばいいな、と思いました。

この対話セッションをとおして、最初の問い「新しいことへのチャンレンジに対して否定的な学生がいた場合、どのように巻き込んでいける?」については、私が「巻き込む」のではなく、そういう環境をみんなで「創り出す」ことで実現可能なのだということがわかってきました。実際、ゼミでやっていきたいと思います。