2019年3月 トルコフィールドワーク

学生企画のプロジェクトのひとつに、シリア料理のレシピプロジェクトがあります。そのプロジェクト活動として、学生たちが2019年3月にトルコへフィールドワークにいきます。活動記録をここでシェアします。

<スケジュール>
2019年3月16日(土)イスタンブール
2019年3月17日(日)イスタンブールからガジアンテップ移動
2019年3月18日(月)ガジアンテップ
・Sham Foundationにてスタッフ研修
・家庭訪問
2019年3月19日(火)ガジアンテップ
・家庭訪問
・孤児院訪問(子どもと遊ぶ活動)
2019年3月20日(水)ガジアンテップ
・家庭訪問
・NGO訪問
2019年3月21日(木)ガジアンテップからイスタンブールへ移動
2019年3月22日(金)イスタンブール
・Sham Foundationにてスタッフ研修
・ガジアンテップ大学学生(フェルハット)訪問
2019年3月23日(土)イスタンブール
・NGOにてワークショップの実施
(芥川高等学校、武蔵野女子大学との連携事業)
2019年3月24日(日)帰国

<訪問先>

★イスタンブール
イスタンブールは、歴史でもよくでてくる地域。トルコでもっとも活気がある年でもある。ヨーロッパ側とアジア側にわかれていて、地域によっても色が全然違う。商売上手なトルコ人と会話をはじめればあっという間に1日が過ぎてしまうエキゾティックな街です。世界遺産もたくさんあり、観光地としても人気があります。

(イスタンブールのシンボルのひとつ、ガラタタワー)

(ブルーモスクやアラソフィアなど韓国地は数えきれない)

★ガジアンテップ
トルコ南部の街。現在、ガジアンテップの人口の3分の1はシリアからの避難民といわれています。この地域はもともとアラブ系トルコ人が多く、アラブの文化が生活のいたるところで見ることができます。歴史ある街で、人は暖かく、物価も安く、食べ物はおいしい街です。

(ガジアンテップの街並みは、アラブの国に似ている)

(商店街はトルコやアラブの生活をしる鍵となる)

<活動①:レシピ本制作>
トルコではシリア人家庭を訪問し、一緒に料理を作り、食べて、お話をして、レシピ本とものがたりを一緒につくります。料理および食事は、人と人をつなげるパワフルな人間の営為です。特にシリアの文化では、一緒に食事を共にするというのは文化的にとても重要な意味があります。それは、「家族のように親しい人として迎えたい」という意味です。その場に身を置きながら、シリアの文化、人々の思いを写真、映像、そして言葉として可視化していき、レシピ本を作成します。

★大学連携
ガジアンテップ大学のシリア人学生オマール、ハーリド、アヤ、そして教員のアハマド先生と連携したシリア料理のレシピ本づくりを行います。ゼミ生は、彼らの家族のおうちにおじゃまして、一緒に料理を作り、料理を食べ、それに関するお話を聞きます。

(右上:アハマド先生、右下:オマール、左上:いっせい、左下:ハーリド)

ガジアンテップ大学だけではなく、パリにいるファイーズさんも参加されることになりました。この活動が世界に広がっていくことを想定しながら進めていきたいと思います。

(右:ファイーズ@パリ、左:オマール@ガジアンテップ)

<活動②:難民の現状をしるためのフィールドワーク>

★SELAM CENTRE@ガジアンテップ
SELAM CENTERはシリア人の未亡人およびその子どもを保護する施設(シェルター)である。6年前(正確には5年半前)に設立され、現在、200人のシリア人(未亡人と孤児)を保護している。トルコには、350万人以上のシリア人が避難しており、彼らは社会的脆弱な立場におかれていますが、その中でももっとも脆弱な立場におかれるのが女性と子どもです。彼らは政府の庇護がなければ生活をすることができない。そこで、SELAM CENTREは、女性たちが自立し、子どもたちが義務教育を終えるまでの生活を支援している。このセンターでは、女性たち向けの職業訓練、子どもたちの補修教室、カウンセリングといった活動もある。
SELAM CENTERには、200人のシリア人未亡人およびその子ども(45家族)が保護されている。一時は、70-80人だったのがここ数年で200人に増えたため、シェルターを市内から郊外(ガジアテンップ大学から徒歩15分程度)にうつした。(もともとは、ニセップ(要確認)にあったが、その後ガジアンテップ市内に移設し、現在はこの場所にある)。
ここにいるシリア人は、全員ではないがキムレックを取得しており、トルコ政府の保護下にいる。キムレックを持っていない人は施設の職員の助けを受けてキムレックを申請している。この施設で保護されたシリア人は、いたいだけこの施設にいることができる。すでに施設ができて6年がたつので、中には当初中学生だった子どもが大学生になったりしている。
この施設ができた背景には、女性(未亡人)とその子どもたちだけでトルコに逃げてきたシリア人を保護するためである。トルコ国境を超えることは大変難しく、夫はシリアに残り、母親と子どもだけで逃げてくるケースも多い。また、戦争で夫を失い、母と子だけで逃げてくる人も多い。トルコの孤児院(シェルター)では一時的な保護はあるが、13歳になると別のところにうつされる。家族とは別の場所(separated building)に保護され、そこで問題を起こす子どもも少なくない。親と子どもを離して生活させることは難しく、またシリア人家族もそれを望まないため、未亡人とその子どもが一緒に住める施設の必要性ができ、この施設をはじめた。
この施設は主にTaskforce GLM、SELAMNGO、Human Appealの3つのNGOがパートナーとなって運営している。UN からの視察もたまにあり、その必要性については認識されている。ASAMでも、未亡人とその子どもの保護が必要な場合は、リフェラル先としてこの施設とも連携している。この施設で保護されるのは、シリア人の中でも特に脆弱な立場にいる人たちであり、様々な配慮や工夫が必要となっている。そのひとつが教育である。
この施設で保護される女性のほとんどは教育を受けていない。村出身の人が多く、夫に頼る生活をしているため、女性たちで自立していくことをイメージすることもできない。また、教育を受けていない母親は、子どもの教育を考えることが難しい。そこで、この施設では母親を巻き込みながら、子どもへの教育の重要性を理解してもらうようにしている。そして、学校に行かせるだけではなく、施設で学習支援をして、学校での学習を完了できるようにしている。これは、児童労働を防ぐことにもつながり、この施設においては、児童労働のケースはない。(子どもに働きに行かせることに対して当然と思い、違和感のない母親もいるが、それが児童労働であり、子どもの教育の機会をうばい、将来に影響があることを母親にも理解してもうようにしている)

★Sham Foundation@ガジアンテップ
WEB:http://alshamfoundation.com/en


担当:Yosef Alfares, イヤード

(2019年1月23日のテレビ会議の打ち合わせの写真)

Sham Foundationはトルコとシリアの両方で活動をするNGO団体である。主に(1)health、(2)early recovery、(3)protection、(4)lifelyhood とfood securityの活動を行なっている。ユーセフとイヤードが担当するのは、micro financeと人材育成で、この領域で連携することになった。現地のニーズとしては、異なる文化的背景を持つ人たちが一緒に問題解決を生み出す意識や態度を持つようになるということである。支援の対象となる人と一緒に問題解決を探していくのである。そのためには、その場をつくるスタッフが、彼らを「支援の対象者」としてみるのではなく、「一緒に解決(知識)を生み出す協力者」としてみる必要がある。そういった意識や態度を醸成するためのワークショップを実施する。

★NGO

<活動③:ICTを活用した日本の高校生と現地NGOとの共同学習>

その他、子どもたち向けの活動を実施する予定です。(シリア難民とトルコ人の関係性構築のためのパフォーマンスワークショップ)

(シリア難民とトルコ人の関係性構築のための相互理解のためのWS)

(分身型ロボットを活用して日本の高校生と一緒に料理を作った)

(料理するという日常の活動が特別なものとなった日だった)

活動報告★