明治大&関大合同ゼミ(インプロWS)

明治大学岸ゼミと関西大学久保田ゼミの合同ワークショップを関西大学で実施しました。合同ゼミは2日間で、最初の2日は、明治大(&三宅貴久子先生)企画の演劇手法(インプロ)で生み出すダイナミックな学びとその環境デザインワークショップ。教育に関心のある学生と教育関係者のみなさんと一緒にインプロを体験し、教育にどういかしていくか一緒に考えました。(文責:岸磨貴子)

 授業を行うとき、私たちは「こういう流れに持っていきたい」「児童生徒にこうなってほしい」と自分の枠にはめてしまうことはありませんか?予想できないことがあると不安、やり方のわからないことはできるだけやりたくない、経験したことがないことはできない、と不安になり、指導案どおりに授業を進めたい、イメージどおりに児童生徒をもっていきたいと思いがちです。

 総合的な学習の時間、教科横断型授業をはじめ「探究」を軸とした授業では、教師は児童生徒と「会話」をしながら、問いや方法、知見を一緒に作り出していきます。教師はこういった授業をなかなか予定調和に進めることはできません。
そこで、本ワークショップでは、インプロを通して、教師と児童生徒が「
即興的かつ協働的に学習・発達できる場を生み出す」ことを体験していただき、そのデザインについて考えたいと思います。

 インプロファシリテータは、東京学芸大学の堀光希さんです。2年前から度々インプロワークショップでご一緒させてもらい、今回、ファシリテータをしていただくことになりました。ずっと一緒に何かやりたい!と思っていたので実現できてとても嬉しいです。

【アクティビティ1:拍手まわし】

インプロワークショップで最初にやる活動としてよくあがるのがこの拍手まわし。 全体で円になり、拍手を右まわり、または左回りにまわす。 いろんな方向に拍手をまわして、つないでいくというものです。

今回、堀くんのファシリテートのもと、いろんな工夫や変化も入りました。
①右回りにまわす
②隣の人と同時にたたいてまわす
③目を大きくして目があった人と場所を変わる (その間も②は続く)

①は、誰でも参加ができる活動。 スピードをあげつつ何回かまわしていき、リズムができるとそこに変化を入れる。それが②。 ②も最初は隣の人と同時に手をたたいて回すとなると、お互い「いっせいのーで、パン」と確認しあいながらゆっくり進んでいく。 2周目に「スピードアップしましょう」という言葉に隣の人との呼吸が自然とあっていく。 時間をかけずとも目や体の動きで同じタイミングで拍手ができる。 そしてそれを次にまわしていくことができるようになっていく。 全体でリズムができると、とんとんとんと全体が呼吸をするように拍手が流れていくのが面白い。 ③では、目を大きくして目があった人と場所を変わるというもの。 誰かが「私と目をあわせるかも」と全体をみる。 みんなの顔が前を向くようになる。 誰かが投げたもの(目線)をちゃんと受け止めようと顔をあげていくのがよかった。 目があったと思って動き出したら隣の人も動きだしていた、ということもあり、目線を投げるのも受け取るのも難しい! だからこそ集中する。 次にさらにレベルアップしていく。

④は隣の人に拍手を回す際、拍手を回した人の名前を一緒にいう。 たとえば私(岸)と隣(三宅)なら、私は三宅先生をみながら「三宅」といいながら拍手を回す。 名札があるので隣の人はそれをみて名前をいうが、拍手を送る方が名前がわかるように名札をみせたり、「岸です」と相手に名前を声で伝えることもある。これをしている間、②と同様に全体が拍手を回している人に視点を向けるので、その人の名前がわかってくる。それをスピードアップしていく(⑤)と、隣同士だけでシェアしたはずの名前が全体として共有されていく。面白い!何度かやっていくうちにスピードを落とさないように、おもわず名札に目がいってしまったりするのだけれど、「正確でなくてもいいので、相手としっかり目を合わせる!」という指示のもと、顔があがる。名前をいうことが大事ではなく、わからなければ相手の力をかりながらリズムよく全体をつくることを経験しているのが見えた。

最後に⑥では、②と③を同時にした。 ②の活動では拍手をしている2人にみんな目線を向けていたけれど、 ③の活動になると目線が拍手をしている人だけではなく、全体を見るようになる。 それに拍手が回ってくるのでタイミング悪くその場にいないと拍手が回らないので全体をみながら目をあわせて場所を移動していく。まさに全体をいるという活動だな、と思った。

★この活動から学んだこと・授業づくりに活かせること★

【アクティビティ2:がんばらない活動】

「2つのバージョンで同じ行動をしてもらいます。 まずは、Aのノーマルバージョンです。 鼻を触ってください。目配せしてください。頭を触ってください」という指示に参加者がいわれたようにする。 次に「頑張るバージョンです。鼻を”頑張って”触ってください。”頑張って”目配せしてください。”頑張って”頭を触ってください」といわれると、 みんなが「がんばって?」というところにクエスチョンマークを持ちながら言われたことをする。 「どっちがやりやすいですか?」という投げかけに「Aは自然にできる」「Bは全身の筋肉を使う」「がんばるって、何をしたらいいのかわからない」「どうやっていればがんばるって見えるのだろうと考えた」という意見があった。 人間は頑張ろうとするとたくさん筋肉を使うので、動きがぎこちなくなったりしてむしろ本来の力を発揮することが難しくなります。 では実際に【頑張らない腕】のアクティビティを通して体験してみましょう。


①体格が同じくらいの人と2人組になる。
②ひとりが全身に力をいれて腕を伸ばし、もう一人はその腕を下げる。
③次に同じ人がリラックスして腕を伸ばし、もう一人がその腕を下げる。下げらせそうになった時だけ力をいれる。それまで手首から噴水がちょろちょろとでているイメージ。
④②と③にどんな違いがあったのかシェアリング。 違いがよくわかるもう一つアクティビティ。

①4人が後ろで支えながら一列になる。 ②一人がその4人を”がんばって”押して倒そうとする。 ③次に同じ人がリラックスして(アハハ〜といいながら)両手を前にだしながら4人に向かって歩いていく。 ④②と③を比較してどんな違いがあったかシェアリング。 わかったのはがんばらないほうが、力がでるということ。がんばった状態でスタートすると、すでにそこが力の頂点なのでそれ以上でない。リラックスしていると、本番で力を最大限に発揮できるので、力がその時マックスに出せる。

★この活動から学んだこと・わかったこと・授業づくりに活かせること★

【アクティビティ3:魔法の箱】

私たちの身体は「がんばろう」とすると「がんばれない」ということがわかりました。 むしろ「がんばらない」ことで本来の力が発揮できるようになります。 では、思考はどうなのでしょうか。次のアクティビティは「魔法の箱」です。
①2人組でAとBを決める。
②AはBに架空の箱を用意する。
③Bは箱から何かを取り出す。中身はなんでもよい。
④AはBに「それなんですか?」と聞く。
⑤Bは取り出したものを答える。

Aのひとは、テンポよく、ポジティブな反応をかえしながら次々聞いていく。 するとBの人はアイデアを出しやすくなる。 次は、頑張るバージョンの「黄金の箱」で実験をする。 「黄金の箱」の中には、この世のすごいもの、すばらしものしかはいっていない。 それ以外のものはでてこない。 同じようにBはAがもつ黄金の箱から「すごいもの、すばらしいもの」を出していく。

さて、魔法の箱と黄金の箱、どちらのほうがやりやすかっただろうか。 結果、99%が「魔法の箱」のほうがアイデアがでてくると答えました。 「黄金の箱」は、”面白いものじゃないと”、”すばらしいものじゃないと”と考えるとむしろアイデアがでてこなかったということだった。 どうして「黄金の箱」ではアイデアを出すのが難しかったのだろうか。 インプロでは「検閲」という言葉でそれを説明する。 私たちは日々の生活の中で「これをしちゃいけない」という検閲をかけている。 検閲は主に3つのことー頭がおかしい、エロ、普通ーである。 人はこの3つのことを日常で言わないようにしている。 なぜそうなったのか?それは、社会性と学校教育が関係している。 大人になるにつれて社会性が身についてきて、社会の中で「やっちゃいけない、いっちゃいけない」ことに縛られ「人にどう思われるか」を考える際におこってくる。 そしてその重たる場所が学校教育である。学校教育では、「正しい」と「間違っている」が教えられる。美術でも歌でも「上手」と「下手」と区別される。英語の発音でも「きれい」と「下手」で区別される。 そういった区別に身を置くことで、検閲がかかっていくのである。 インプロではそういった検閲をちょっとはずすためにも使われる。

★この活動から学んだこと・授業づくりに活かせること★

参考文献:キースジョンストンがおすすめするのはこちら
・ティモシー・ガルウェイ (著), 後藤新弥 (訳)(2005)「インナーテニス」日刊スポーツ出版社

【アクティビティ5:リスクをとるゲーム】

人はリスクをとることに対して不安や恐怖を覚える。だからこそ「わかっていたい」し「先を知っておきたい」というのがある。私たちにとってリスクとは恐怖や不安の対象だけれど、逆に・・・。まずは経験してみましょう。ゲームの名前は【うちの猫、知りませんか?】

①円になる
②鬼が「うちの猫知りませんか?」と聞く。
③「知りません。隣の人に聞いてください」といわれたら、別の人に聞く(隣の人でもいいし、それ以外の人でもいい)。その間、他の人は、目があった人と場所をチェンジする。
④チェンジをしているその瞬間に空いた場所に鬼はいっていい。そこで場所を取られた人が鬼になる。

このゲームがはじまってすぐはみんな鬼にならないように必死になって動く。鬼が近い場合、目をあわせないようにして場所を動かないように「リスクをさける」。鬼から遠い場所にいる人も目があった人と全力で交代して場所をとられないようにする(リスクを回避する)。

ここでゲームを「楽しむ工夫」のインストラクション。「このゲームはリスクを回避するより、リスクギリギリのところで挑戦するところが楽しいのです」。

それからみんな目をあわせて交代する時もゆっくり歩いてみたり、鬼を挑発するように交代するなどしていく。ゲームそのものをみんなで楽しくしていく。もはや鬼になることは恐怖や不安の対象ではなくなっていく。 子どもはこのゲームの楽しさを大人よりわかっているので積極的にリスクを取って楽しもうとする。 しかし大人になると鬼になること=負けること=ダメなことになってしまうのでこのゲームを楽しむことが難しくなっていく。

★この活動から学んだこと・授業づくりに活かせること★

【アクティビティ6:ビビデ・ビビデ・バップ】

同じようにリスクを楽しむゲームです。
①円になる
②鬼が「ビビデ・ビビデ・バップ」と言い終わる前に、言われている人は「バップ」と答える。鬼が「バップ」というと「何も言わない」。まずはこの2つのルールでゲームがはじまる。間違えると鬼を交代する。
③次にルールをひとつ追加する。鬼が「エレファント」というと、言われた人は、右手で鼻をつかんで、左手を腕の輪に通して「パオォ〜」という。そして両サイドの人は、像の耳をつくる。これを鬼が「エレファント」といったあと10秒以内にそのポーズを作る。作れなければ、作れなかった人が鬼交代。
④さらにルールがひとつ追加される。鬼が「バイキング」というと、言われた人は親指とこ指だけ、頭の上であてて「ウィーン」という。両サイドの人は船を漕ぐポーズをうsる。鬼が「バイキング」といって10秒数える間にそのポーズをする。
⑤さらに新しいルールを加える。最後のルールは「なんでもあり」である。たとえば「たぬき」といったら同じように3人でそのポーズを10秒以内につくる。

このアクティビティを終えて、気づきのシェアリング。最後のアクティビティでは、たった10秒の時間にもかかわらず3人でポーズが作れたことに参加者もびっくり。

このゲームでは「このポーズを取ろう」と考える前に身体の方が先にポーズを取っているという現象が起こりました。 インプロの言葉でこの現象をspontaneity(自然発生)と呼びます。 spontaneityは誰もが持っているもので、何かを見たり聞いたりしたときに、何かを連想する自動的な脳の働きのことです。 このspontaneityを私たちは検閲によって抑圧し、働かないようにしています。 しかし「ビビデ・ビビデ・バップ」のように人が熱中していたりすると検閲の働きが弱まり、頭より先に体を動かせたりする。 すぐに体を動かせるものは頭で検閲にかかりにくいから、spontaneityによっていろんな表現がでてくる。 いつもの私たちは「こうやったら変にみられるかな」「これは面白くないと思われるかも」「これ間違ってるかも」など検閲が入り、 動けなくなってしまうが、今回のアクティビティでは検閲を受けなければ、私たちは体を自由に動かせることを経験した。

★この活動から学んだこと・授業づくりに活かせること★

【アクティビティ7:ストップ・アンド・ゴー】

これもよくやるアクティビティのひとつで私のお気に入りでもある。ストップ・アンド・ゴーです。
①ストップ・ゴーという合図にあわせて、歩きをとめたり、止まったりする。
②ストップ=進む、ゴー=進むに意味をかえる。
③しばらくやってから2人ペアを組む。

このゲーム、すごく間違いが怒ってしまって笑えちゃいます。言葉に私たちの身体がどれだけ反応しているかよくわかります。

次に綱引きゲームです。
①1人のペアをつくる。
②綱引きを演じる。
③勝った?まけた?

エアゲームにもかかわらず、なかなか勝負が決まらなかったり、時間がかかったり、綱が伸びたり。みんな勝ちたいと思っている。勝つこと=正しいことと潜在的に思い込んでいる。このゲームでは、「勝ちたそうな人」を勝たせてみよう。

④相手をみて相手が勝ちたそうなのか、負けたそうなのかを見極め、それによって勝敗を決める。相手が楽しく勝ったり負けたりできるように演じる。

インプロでは相手の為に動くということは、相手に良い時間をつくるということ。自分だけが目立とうとするとうまくいかない。自分が輝くことと、相手が良い時間をもつことは、みている人にとっても幸せになる時間となる。「Give your parnters a good time」が前提。

⑤1対全員で綱引きをする。
⑥1に勝たせるように演じる。
⑦おもいっきり負けるパフォーマンスをする。

⑥より⑦のほうが豪快にまけるパフォーマンスができた。勝った人はすごく気持ちがよかったし、負けた人たちもそれをみて幸せな気持ちに。みている私(岸)もすごく幸せな気持ちになりました^^

【アクティビティ8:私は木です】

①3人人組みになる。
②A(ひとりめ)が「私は木です」といってポーズをとる。
③B(ふたりめ)がそれに一つ追加する。たとえば「私はりんごです」といって場面に入る。
④C(3人目)がさらに追加する。たとえば、「私はとりです」といって場面に入る。
⑤Aは、BかCのどれかを残します。「私は”りんご”を残します」というと、Bはそのままのポーズでのこり、同じように「私はりんごです」からはじめ、同じようにポーズを追加していく。
⑥シェアリング
・そんな発想もあるんだ
・正解・不正解がないのがいい
・独創的になりたいなら独創的であろうとしない。誰かの真似ではなく自分にとっての普通、当たり前が独創。
・即興なので失敗は当たり前で、修復可能
・その人らしさをだしていく

★この活動から学んだこと・授業づくりに活かせること★

【アクティビティ9:魔法の粉】

①参加者の一人が面接シーンを演じる。
②そこに「魔法の粉」をかける。
③同じシーンを演じる。
④何が違うかのシェアリング

②の魔法の粉(言葉)は、「胸にある金の玉が輝き光があふれでているイメージで歩いてみて」でした。何か、パフォーマンスを変えてほし時具体的に「肩を開いて、背筋を伸ばして」と具体的に指示するより、「イメージを渡す」とうまくいく。「自信をもって歩いて!」ではなく「胸に輝く金のたまがあるイメージで」という。

人はしぐさひとつで相手への見せ方、理解のされ方が違ってくる。たとえば、瞬きをしながら話すと「うそをついてそう」「自信なさそう」とみえる。目をぱっちりあげて肩をひろげると「自信がありそう」「えらそう」とみえる。人に「どう見えるのか」ということを知ることは大切。

なぜ「どう見えるのか」が大切なのだろうか。
①2人が舞台にあがる。
②腕を組み、足を相手とは別の方向にむけて、少し背中を背けるようにして「あなたのこと大好きだわ。ほんと素敵ね」と褒め合う。
③相手に体をむけ距離を縮め、目をみながら、足を相手のほうにむけて組むみ「あなたのこと嫌いだわ。最低だな」といいあう。
④どう見えたのかシェアリング

結果、②についても③についても話している内容ではなく、態度で私たちは二人の関係をみているということを確認できた。つまり、私たちは、話している内容よりもその人の態度で相手を理解(解釈)するのである。

★この活動から学んだこと・授業づくりに活かせること★

【アクティビティ10:ステイタス】

態度(パフォーマンス)は、人にどうみられるかだけではなく、自分自身にも影響があります。ステイタスというアクティビティを通してそれについて深めましょう。

①AとBのグループにわかれる。
②Aのグループは、「目があったら離さない、足は外に開く、話す前に”えー””あー”をつける」。
③Bのグループは、「目があったらすぐにそらす。足は内向きにする、話前に”えっ””あっ”をつける」。
④AとBで交流パーティ(情報関連の交流会)でそれぞれの役を演じながら会話をする
⑤役割を交代する

次のグループに交代。

⑥AとBのグループにわかれる。
⑦Aのグループは、「頭を動かさない、呼吸はゆっくり、話し始めたり、質問に答えるまでに間をあける」。
⑧Bのグループは、「頭を動かす、呼吸は浅く、すぐに話をして質問に反応する」。
⑨AとBで交流パーティでそれぞれの役を演じながら会話をする
⑩役割を交代する

⑪シェアリング
・BはBといると安心
・Aのほうが話題がぽっぽとでた
・Aの時、何かすごい職業についている感じがする
・序列ができる

このアクティビティで感じた「序列」を、インプのことばで「ステイタス」という。ステイタスは存在する生物社会にどこにでもあるもの。ステイタスが高い=社会的ステイタスというわけではない。腰の低い社長もいるし、偉そうなアルバイトもいる。ステイタスは、身体の動きで高低を帰ることができる。教師は、状況に応じてステイタスを変化させる職のひとつ。子どもや犬、猫はステイタスをかなりみている。目はステイタスを示すので特にみられている!(肉食動物の世界で、目をあわせてそらし、また目をあわせると”私はあなたの餌です(あなたに支配されています)の意味になる)

私たちはステイタスを社会で生き抜くために身につけていた。どちらが良い、悪いではなく、いきていくために本能でそのパフォーマンスを身につけてきた。ほとんどは無意識である。

★この活動から学んだこと・授業づくりに活かせること★

堀さんの持論だけれど、ステイタスを使うことで、異性を落とすことも可能。目を合わせたあと、目を下にむけて、斜めにむけて、それから相手をみると、相手はドキューン!とするらしい(笑)

【アクティビティ11:ステイタスを用いたアクティビティ①】

自分のステイタスによって、人は考え方、態度がずいぶん異なる。それを体験するためにワンシーンを演じる。

①4人が舞台にあがる。
②4人は家族である。それぞれ役割を決める(おじいちゃん、おとうさん、娘、孫など)
③そあれぞれが自分のステイタスを1、2、3のいずれかできめる。3がステイタスが低く、1が高い。
④家族のシーンである。場面設定が提示される。「門限が7時にもかかわらず15才の娘が9時になっても帰ってこない。
⑤娘役は、それ以外の3人の様子を少しみて(10秒くらい様子をみて)玄関からはいってきて、そこから場面がはじまる。
⑥観客は、それぞれのステータスのぶつかり合いを分析する。同じステイタスの場合、ステイタスのぶつかりがはじあり、調整しようとする(ステイタスのポジショニングがはじまる)

【アクティビティ12:ステイタスを用いたアクティビティ②】

次にステイタスの差を小さくするアクティビティをする。
①4−5人で一組みになる。
②2人がシーンをする(設定は自由)
③みている人はどちらがステイタスが高いかを理由を含めて伝える。演者のふたりが同じくらいのステイタスになるようにやってみる。
④シェアリング
・顔に手をおくとステイタスが低くなる
・相手に触るとすステイタスが高くなる

★この活動から学んだこと・授業づくりに活かせること★

【アクティビティ13:カテゴリーゲーム】

ここからがWS2日目です。学生以外の参加者は半分くらいが交代になったので新たなメンバーと新たな雰囲気でスタートです!最初は、【カテゴリーゲーム】。誰かが提案をしてそれに当てはまると思った人がその人の周りに集まる。たとえば「今日パンを食べてきた人!」「結婚している人!」「学生!」「気持ちは学生」など。誰が提案してもいいし、どこから提案してもいい。どんな参加者がいるかがよくわかり、お互いに関心が持てたように思います。

★この活動から学んだこと・授業づくりに活かせること★

【アクティビティ14:並び替え】

①円になる。
②ファシリテータを基準として、与えられたお題の順番を左右の人と比べながら自分の場所をきめていく。たとえば、「誕生日順」。左右の人に誕生日をきいて順番をきめる。
③答えあわせ
④お題として「手が暖かい順」などもあり。手をさわって、どちらが暖かいか確認しあいながらいろんな人と出会う。

場はとても大切。場によって人は創造的にも協働的にもなる。たとえば、全体の前にひとり立たされると人は緊張する。緊張すると新しいことにチャレンジしにくくなる。新しいものを生みにくくなる。これを変化させてみる。1対全体ではなく、半分ずつならどうだろうか?場における自分の場所、人との距離感など場のデザインが大切。

★この活動から学んだこと・授業づくりに活かせること★s

【アクティビティ15:イルカの調教】

戦時中、イルカの調教についての研究がおこなわれた(イルカを戦争に使うため)。そのため、政府はイルカの調教に多額の予算をつけた。その研究を先導したのがグレゴリー・ベイトソンで、彼はイルカは創造的なことができるのか、について研究をした。イルカを調教する際、指示どうりのことができれば餌をあげるという刺激と反応理論が利用された。次にやったのが、イルカがこれまでやったことがないことをすれば餌をやるようにした。最初イルカはジャンプすると笛がなり餌がもらえたのに、次にジャンプしても餌がもらえないことに気づいた。また違うことをすると笛がなり餌がもらえた。それがわかったイルカは、いろんな行動をするようになった。この実験は、行動主義心理学にある正の強化と負の強化に関する研究。正の強化で人の行動を変えてみようというインプロ。

①イルカを一人決めてそれ以外の人でイルカにしてほしいことを決める(たとえば、白板をさわる、手をあげるなど)
②イルカ役だけ答えを知らないのでいろいろやってみる。周りの人は、やってほしいことに近づいてきたら「リンリンリン」と教えてあげる。
③大切なことは「イルカを苦しめない」「リンリン以外のことを言わない」。辛いと思うともうやりたくなくなるから、やさしくヒントを出す。
④複数のグループでやる場合、合図の音を変える(混乱しないように。シャンシャンとか)

参考文献:グレゴリー ベイトソン (2002) 「精神の生態学」
新思索社; 改訂第2版

【アクティビティ16:ロマンスポリス】

参加者のひとりに「女性に持てない」と悩む学生Iがいた。Iが上手にデートができるようにインプロを使う。
①男性一人と女性一人が前にでる。
②女性4人がポリス役として席に着く。
③デートの様子をみながら、男性がいいことをしたら「ヒューヒュー」といい、ダメだったら「ピンコーン!」と手をあげて、ダメなところを指摘し、そのシーンをやり直す。

正確なタイミングで、正確なフィードバックを与えないと学生I(イルカ)は混乱し、正確に行動を修正できなくなってしまいます。 正直なフィードバックを送り合うことはインプロにおいて非常に重要です。

【アクティビティ17:ぬいぐるみ】

すばらしい俳優がいます。ピンクのうさちゃんです。このうさぎとシーンをつくります。
①一人が前にでて、席に座る。その横にうさぎのぬいぐるみが座っている。
②シーンについての説明が与えられる。「数日前に妻をかっとなって怒理殴って家をでてしまった。それからしばらくして家に帰った。家に入ると妻(うさぎのぬいぐるみ)がテレビをみていた。
③役者は、ファシリテータの指示のとおりセリフを述べてシーンを進めていく。
夫:この前はごめんな。かっとなってしまって。
妻:だまってテレビをみている
夫:許してくれる?なんでこっち向いてくれないの?
妻:だまってテレビをみている
夫:謝ってるじゃないか!
妻:だまってテレビをみている
夫:カッとなって妻をなぐる
妻:床に倒れる

このシーンにおける妻はどんな様子だったのか?「頑固」「怒っている」「深い悲しみ」「辛い」とみえた。ただのぬいぐるみである。なぜそう見えるのだろうか。人は、文脈によって自然に人の感情を「読もう」とする。

インプロで大切なのは「Less is more」情報が少なければ、見る人は自分で情報を足して理解をしようとしてくれるということ!

【アクティビティ18:次なにしますか?】

【アクティビティ19:サンキューゲーム】

インプロでよくやるのが「サンキューゲーム」。最初にルールの説明。
①円になる。
②誰か(A)がポーズを作る。
③円から誰か(B)がでてきて、そのポーズを戻す。
④Ahは「サンキュ」といって円に入る。
⑤次はBが、新しいポーズをつくる。
⑥Bのポーズに誰か(C)が入り、ポーズを加える。
⑦BはCに「サンキュー」といって円にはいる。
⑧Cが新しいポーズを作り、他の人が同様に③または⑥し、Cがサンキューとお礼をいったら次のポーズをする。
⑨ある程度ゲームが進んだら次は、周りの人がそのポーズ(作品)に名前をつける。つけてもらったら「サンキュー」といって、二人がぬけて、新しいふたりが同じように作品をつけて周りが名前をつける。
⑩全体で行う。ひとつのグループをとりあげ、みんなでタイトルをきめる。
⑪見ている人の中から二人をファシリテーターがとめて(フリーズ)して、周りがタイトルをつける。
⑫振り返りのシェアリング
・なんでもないポーズでも、いろんな意味をもたすことができる。
・前頭葉が意味を生み出す
・意味はあるのではなく、つくれる
・インプロではアクセプトすることでシーン(ストーリー)が進む
・変化することへの恐怖からブロックしないようにリラックス!

インプロでは「オファー」という言葉があります。「オファー」とは人が言うこと、すること全てを指しています。 「オファー」には「ブロック」されるか「アクセプト」されるかしかありません。 例えば「ドライブに行こう!」というオファーに対して、「嫌だ」と返せば「ブロック」になり、「いいよ」と返せば「アクセプト」になります。 「オファー」には意味が明確であるものと、意味が明確でないものがあります。 「ドライブに行こう!」は意味が明確なオファーです。「じゃあ行こうか」というオファーは意味が明確ではありません。 すなわち、「じゃあ行こうか」というオファーは相手が何を言うか/するかによって意味が後から確定されるオファーです。 この種類のオファーのことを「ブラインドオファー」と呼びます。 「ブラインドオファー」に関わるゲームをやってみましょう。

【アクティビティ20:同じ理由で出るゲーム】

楽しく遊ぶためには、提案した人に「のっかる」ことが大切。でも、なんでも「のっかる」のではなく、「のっかりやすい」提案も大事。でも何を提案したらいいかもわからない。そういう時は頭で考えるのではなく、人の動きをみながらみつければいい。【同じ理由ででるゲーム】です。

①5人が前にでる。
②しばらくお互いがやっていることを真似する。じっくり、話さず、意味を付け加えないように体の一部だけを真似していく。誰の真似をしてもいいが全体で真似していく。
③その動作から生まれてきた提案をする。「火事だ、逃げろ!」「遅刻だ!走れ!」など、その行動から場面がみえてきたら、提案をして、周りはそれにのっかって舞台の外にでる。
④全員が舞台の外にでたら大成功!ひとりでも残ったら(のっかれなければ)もう一度!

人は新しいことに挑戦することに恐怖や不安を感じる。うまくできなければどうしよう、みんなのっかってくれなければどうしようと未来のことに不安を感じる。未来に不安を感じると、「今、ここ」にあるものが見えなくなってしまう。このゲームでは、他の人の動作を真似することで「今・ここ」にある情報に目をむけ、アイデアを生み出す。

【アクティビティ21:ハットゲーム】

インプロでは「being there」がひとつの重要なキーワードになる。が、人は考えことをしたり、先のことを心配したりすると、とたんに「ここにいなくなってしまう。」そういった自分の気づくためのゲームです。2人でシーンをして、相手が「今ここにいない」とおもったら相手の帽子をとる。帽子がとれたらとったほうが勝ち。よけられたら避けたほうが勝ち。

【アクティビティ22:ワンボイス】

このワークショップ最後のアクティビティは【ワンボイス】。複数名が一人の人間のように振る舞い会話します。

①男女でわかれて2つのグループAとBにわかれる。
②1つのグループがひとつの人間として振る舞う。
③「今日の天気はなんですか?」「お名前は?」とファシリテータが質問すると全員で声をあわせて答える。何を答えるかは事前にきまっていないので、周りの動きや小さな声をひろいながら完成させる。
④AとBのグループが水族館デートをする。
(ここに映像いれる)
⑤振り返り
・誰かにのっかるほうがいい
・人はコントロールされたくないので、自分のコントロール権を守ろうとする。

【質疑応答】

最後に:今回も黒木さんにグラフィック・レコーディングを担当いただきました。黒木さんが記録してくれるため、みんな活動に集中できました。多くの情報が早く飛び交う中、流れも重要なところもしっかり抑えてくれ、振り返りがしやすかったです。また、経験がどんどん蓄積されていくこと、様々な活動との関連性なども確認でき、深い学びにもつながりました。黒木さん(あゆ、ありがとう!)

★振り返りのためのテレビ会議を実施します★

本ワークショップを通して、今後ICT✖️パフォーマンスをキーワードに「子どもの多様性を生かした授業づくり」についての2年間の研究を行います。まずは、ワークショップで経験をテレビ会議を通して振り返りをします。

第1回目:2月12日(火)18:30-19:30
第2回目:2月18日(月)18:30-19:30
第3回目:2月25日(月)18:30-19:30
第4回目:3月4日(月)18:30-19:30