研究発表

2022年

岸磨貴子(2022) 社会の課題を自分ゴトにつなげるための4つのアプローチ
―NHK for Schoolの映像コンテンツを活用したSDGs教育プログラムの開発―異文化間教育学会43会大会, 京都,2022.6.12

概要:本研究では、映像コンテンツを活用したSDGs教育プログラムの開発に向けて、課題のひとつである「社会の課題を自分ごとにつなげる」アプローチを、研究誌『異文化間教育』で報告された先行事例の分析を通して明らかにした。学校におけるSDGs教育は、総合的な学習の時間(探究学習)、道徳、英語などで取り組まれている。その取り組みの中で、児童生徒がSDGsに関連する社会の様々な問題を知り、関心を持つきっかけとして、または、児童生徒の関心に基づいて理解を深めるために映像コンテンツが活用されたりしている。確かに、映像コンテンツを見せることで、児童生徒は世界が抱えている問題を知ることはできるが、見るだけでは、それを自分ごととして捉え直しすることが難しい。また、映像コンテンツで描かれたものを現実として鵜呑みにしてしまうこともある。映像コンテンツは、人によって切り取られ、編集されたものである。社会の問題は多面的であり、映像コンテンツはひとつの現実でしかなく、描かれていない側面にも目を向けていくことが重要である。本発表では、「社会の課題を自分ゴトにつなげるためのアプローチ」について先行研究を整理しその具体的な手法および参照できる理論的枠組みとして佐伯のドーナッツ論を提案した。

→ 参考文献:PDF01 ダウンロードはこちらから

Tanaka, M. Ishii, Y. Seki, O. Kishi, M.(2022)How Elementary School Teachers Support Students’ Communication in an Online Cross-Cultural EducationProceedings of 20th International Conference for Media in Education, Hawaii, 2022.08.03

概要:The purpose of this research is to identify how school teachers intervene in students’ cross-cultural exchange and communication. This study focuses on three Japanese teachers from an elementary school in Osaka (herein after referred to as the J School) and one Nepali teacher from an international school in Tokyo (herein after referred to as the N School) who have started a cross-cultural exchange program since 2022 April. The number of Japanese researches on cross-cultural education has gradually increased as globalization deepened in the Japanese society. One of the main objectives of cross-cultural exchange programs is to promote conviviality among students. However, mainly due to distance issues, students are obliged to start their communication online, which could negatively affect the eventual outcome of the program. In this paper, authors seek to clarify what teachers can do to support students’ online communication, especially at their very first step of encounter, in this case between Japanese and Nepali students, through an observation and interview approach.

→ 参考文献:PDF02 ダウンロードはこちらから

Kenichi Kubota,Kikuko MiyakeTakujiro Ito(2022)Designing International Exchange Activities Between Turkish and Japanese Elementary Schools Using Video ClipsProceedings of 20th International Conference for Media in Education, Hawaii, 2022.08.03

概要:The purpose of this research is to describe the exchange study in 2022, which is mainly based on exchange of video images in elementary schools between Japan and Turkey. The authors would like to clarify the role of video media in the exchange and how children are learning. Because the school calendar differs from country to country, we began by using video to understand the other country. 4 months of data from March to June 2022 were analyzed to discuss the importance of video in the exchange learning process. The videos used included NHK for School teaching materials, YouTube videos, and videos filmed at the schools. The authors will examine how these videos were used and how the students engaged in the program and report on the progress of the program.

→ 参考文献:PDF03 ダウンロードはこちらから

田中真菜, 石井芳生, 岸磨貴子(2022)ICTを活用した多文化実践をデザインする
―自立共生的な目標設定プロセスに着目して―第41回日本教育工学会, 川崎, 2022.09.10

概要:本研究の目的は、異文化を有する2校のオンライン学校間交流において、共通の学 習目標設定までのプロセスを明らかにした.学校における ICT 環境の整備が進められる中、 学校はインターネットを活用した学校間交流を実施しやすくなったが、学校間をつなげば有意義な学習活動が生成されるわけではない.両校それぞれのカリキュラム、ニーズや関心、ICT を含む学習環境 にそった形で教育活動としての目標や方法を設定することが必要となる.本研究では、日本の教師が、 ネパールカリキュラム校の教員との関わりの中で、双方にとって「ちょうどいい」目標や方法を設定するプロセスを明らかにした。

→ 参考文献:PDF04 ダウンロードはこちらから

石井 芳生、田中 真菜、大谷 温理、岸 磨貴子(2022) 異文化の他者理解を促す映像コンテンツの活用日本教育メディア学会 第29回 年次大会, 愛知, 2022.11.27

概要:本研究では、異文化の学校間交流学習の初期段階において他者理解を目的とした映像コ ンテンツの活用について考察することを目的とする.具体的には、教師はどの映像コンテンツ を、なぜ、どのタイミングで投入してきたのかについての具体的なプロセスを示すと同時に、 児童の他者理解にどのような変化がみられたかを明らかにする.本研究で事例とするのは、大阪のX校と東京のY校(ネパール人学校)の学校間交流学習である.分析の結果、他者理解促 進のためには複数の映像コンテンツの組み合わせによる多様な気づきや問いの生成支援が重要であったことがわかった。

→ 参考文献:PDF05 ダウンロードはこちらから

三宅貴久子、鈴木慶樹、久保田 賢一 (2022) 映像コンテンツを活用した探究学習の可能性
―個々の興味・関心を重視した活動のプロセスー日本教育メディア学会 第29回 年次大会, 愛知, 2022.11.27

概要:本研究の目的は、児童が探究学習においてどのような基準で映像コンテンツを選択し、それをどのように整理・分析し、発表に活かしているかについて明らかにした。 研究対象校は、1年生から個人探究に取り組んでいる。児童自身の興味・関心に応じた 課題解決を通してこれからの社会に必要な資質・能力を育成することを目標としており、 SDGsとは親和性が高い学習である。課題設定段階や追究段階において、児童は自ら情報 収集に取り組み、自身で映像コンテンツを選び視聴している。その実態を明らかにする ために、アンケート調査及びインタビューを実施し、データを収集・分析する。それに よって、映像コンテンツを活用した探究学習の可能性について提案した。

→ 参考文献:PDF06 ダウンロードはこちらから

三浦一郎(2022)映像メディアを読み取る児童の視点の検討
ー国際学校間交流における映像メディア交換の取り組みを通してー日本教育メディア学会 第29回 年次大会, 愛知, 2022.11.27

概要:本研究では、世界市民としての意識や多文化を理解する教育を実践しやすい環 境としての在外教育施設に着目し、在外教育施設と日本の小学校間の国際学校間交流 において映像メディア交換する実践を行った。交流先の姫路市立手柄小学校5年生児童 96人が2本の映像を見た直後の振り返り記録を、類似した意味をカテゴリーにわけてカ テゴリーごとに考察することで、国際学校間交流で交換する様々な映像メディアか ら、児童が何を読み取るかについて明らかにした。

→ 参考文献:PDF07 ダウンロードはこちらから

岸磨貴子、久保田賢一(2023)課題研究報告「映像コンテンツを活用したSDGs教育」 教育メディア研究(印刷中)

概要:日本教育メディア学会の課題研究「映像コンテンツを活用したSDGs教育」では、次の4つの発表が行われた。1つめは三宅会員による「映像コンテンツを活用した探究学習の可能性―個々の興味・関心を重視した活動のプロセス―」で個別探究における児童の映像活用の事例研究である。2つめは三浦会員による「映像メディアを読み取る児童の視点の検討―国際学校間交流における映像メディア交換の取り組みを通して」で、教師が制作した映像による伴走する感覚の醸成について児童の振り返りの分析結果が示された。3つめは加藤会員による「地域ESD実践オンライン教材化と学び合いプラットフォームの構築」で、映像コンテンツを活用したSDGsの教育実践共有のための教員コミュニティの事例が紹介された。最後は石井会員による「異文化の他者理解を促す映像コンテンツの活用」で、日本人とネパール人の異文化間学習において、生徒が相手について知る段階から、個別具体に関わり、共通の関心や問題意識を醸成するそれぞれの段階において映像コンテンツがいかに活用できるかについての実践研究の知見が共有された。本稿では、上記の4件の発表およびその後の全体ディスカッションの内容の一部を以下に紹介した。

→ 参考文献:PDF08 ダウンロードはこちらから

岸磨貴子、久保田賢一(2023)課題研究報告「映像コンテンツを活用したSDGs教育」 教育メディア研究, pp.73-74

概要:日本教育メディア学会の課題研究「映像コンテンツを活用したSDGs教育」では、次の4つの発表が行われた。1つめは三宅会員による「映像コンテンツを活用した探究学習の可能性―個々の興味・関心を重視した活動のプロセス―」で個別探究における児童の映像活用の事例研究である。2つめは三浦会員による「映像メディアを読み取る児童の視点の検討―国際学校間交流における映像メディア交換の取り組みを通して」で、教師が制作した映像による伴走する感覚の醸成について児童の振り返りの分析結果が示された。3つめは加藤会員による「地域ESD実践オンライン教材化と学び合いプラットフォームの構築」で、映像コンテンツを活用したSDGsの教育実践共有のための教員コミュニティの事例が紹介された。最後は石井会員による「異文化の他者理解を促す映像コンテンツの活用」で、日本人とネパール人の異文化間学習において、生徒が相手について知る段階から、個別具体に関わり、共通の関心や問題意識を醸成するそれぞれの段階において映像コンテンツがいかに活用できるかについての実践研究の知見が共有された。本稿では、上記の4件の発表およびその後の全体ディスカッションの内容の一部を報告した。本研究課題には、SDGs教育に取り組む実践者や映像コンテンツの活用に関心のある研究者が多く参加し、活発な議論を行うことができた。

Makiko KISHI, Yuko Kawashima(2023)Designing Educational Practices to Combine Audiovisual Media and Performance –Focusing on the Sensory-Expanding Aspects –(International Conference for Media in Education (2023)21st International Conference for Media in Education, China 2024.8.16-18

概要:This study discusses the significance of performance practices in educational media studies. Historically, researchers and practitioners of Japanese educational media studies have encouraged students to expand their senses through audiovisual media to a certain extent. On the other hand, these studies have rarely paid enough attention to how students learn beyond the given images and impressions, i.e., to generate meaning and transform their perceptions through physical and emotional experiences. Indeed, they deepen their understanding within the range of the given images and impressions. Therefore, the authors aimed to develop educational practices, which expand students ‘senses by encouraging them to relate to the other deeply in the audiovisual media through performance practices. By combining audiovisual media and performance, aspects that cannot be captured by them alone can be illuminated. Finally, the authors discuss the significance and the difficulties of these practices based on the two case studies.

Mana Tanaka, Yoshiki Ishii, Makiko KISHI(2023)XX (2023)21st International Conference for Media in Education, China 2024.8.16-18

概要:With the expansion of globalization in society and education, the importance of multicultural coexistence has increased. To cope with this change, competence for coexistence has been added to the educational goal in Japan. The authors implemented an online collaborative learning program between students in an elementary school in Osaka and students in an international school for Nepali in Tokyo, in 2022. In cross-cultural online collaborative learning, simply connecting schools across cultures through the Internet is not enough for students to deepen coexistence relationships. Therefore, this study explores how students from both schools perceive each other as a person going beyond categorization, and change their relationships and their learning environment. This paper explores students' engagement in cross-cultural communication as collaborative and creative development towards coexistence. It analyzes students’ engagement through videos, field notes, and interviews, employing a performative approach.

岸磨貴子, 植田詩織(2023)特別な教育的ニーズを持つ生徒の学習支援に関する 創造的ノンフィクション-生徒の自己表現を支える放送番組の活用事例から- 日本教育メディア学会(関西大学初等部)

概要:本研究では、特別な教育的ニーズをもつ生徒の学習支援についてオーディエンス(学会参加者および読者)との会話を拓くため、アートベース・リサーチのジャンルのひとつである創造的ノンフィクションに取り組んだ。本研究で紹介する事例は大阪府立の特別支援学校で、肢体不自由のある生徒たちの自己表現を高めることを目的とした情報科の授業である。生徒たち自身が自分の症状や特徴を他者に伝えることができるようになることをめざし、NHK for Schoolの番組を活用して表現することの必要性を認識し、それに取り組む授業を実施した。多様な症状や特徴を持つ特別支援の生徒と、教師はどのように関わりながら指導するかについてその複雑性や状況性を含めて明らかにする。

田端芳恵・岸磨貴子(2023)放送番組+ことばを紡ぐ SDGs 教育実践のデザイン, 第27回し聴覚教育総合全国大会/第74回放送教育研究会全国大会合同大会 (オンライン)

概要:本ワークショップでは、岸磨貴子先生を講師に迎え、SDGs教育における放送番組の活用について検討した。ワークショップ前半は田端芳恵主幹教諭による番組「カラフル!」を活用した実践の報告、後半は番組「ドスルコスル」を使って外国の人たちとの共生について考える活動を行った。田端実践では、あえて番組視聴の前に着目すべき点に関する指示を行わないようにしていた。視聴後の意見交換で、児童は異なる登場人物に目を向けていたことを知り、このような授業デザインの効果を実感した。また田端学級の児童は、相手について理解して終わりではなく、自分だったらどうなんだろうということを考えようとしていた。番組の登場人物のことば、行動、感情を通して、今、隣にいる友だちももしかしたらこんな気持ちなんじゃないかと想像できるようになっていった。視聴体験は、単に映像と出会うのみならず、番組の世界に入って「もし自分だったら」と考える体験になっているのだと感じた。番組が、主人公の子ども本人によるナレーションのことばで紡がれていることも、視聴する児童がその世界に入って自らことばを紡ぎだす上で大きな助けになっていた。

その後のワークショップでは、「ドスルコスル」『どうする?外国の人との共生』の回を全員が個々に視聴し、その後ブレイクアウトルームに分かれてグループ活動を行った。岸研究室の大学院生がファシリテーターを務め、この番組を視聴した感想、登場人物の気持ち、どんなことを想像したかなど、様々な視点で意見交換を行った。次に、番組の登場人物からひとりを選び、その人が大切な人にあてた手紙を書くことを想定して、手紙を書いてみる活動を行った。書いた手紙はオンラインツールのチャット機能で共有した。番組を単に視聴するのではなく、その登場人物の視点で手紙を書く、という体験を通じて、参加者は登場人物の気持ちをより深く想像して“ことばを紡ぐ”ことができた。また、オンラインチャットの即時性を生かした協働的な学び方を体験することができた。

< このワークショップ全体を通して、“SDGs”として示されたゴールを達成するため、またそれに関連する身近な問題を解決していくためには、問題の理解のみで終わらせるのではなく、問題に直面している人たちに共感し自らの行動を変容させていく「自分ごと」とする必要がある。そのような態度で“SDGs”に向き合う授業デザインについて参加者ひとりひとりが考えることができた。

※参考文献の閲覧は承認制となりますので、お問い合わせにてご連絡ください。