#2 ONLINE MORNING CAFE報告

前回に引き続き、オンライン・モーニング・カフェの第二弾として、4月23日木曜日に大阪の特別支援学校で高校教員として働いている植田詩織さんを交えて、現地での活動内容やキャリアについて話し合いました。オンライン・モーニング・カフェは、人に会いに行けない今だからこそオンラインで縁をつなぎ、将来の自分をより考える時期にある大学3・4年生が何かを掴める機会を少しでも増やしたいという思いから誕生しました。また、朝の時間にカフェの清々しい雰囲気で話すことで、その日をいい1日にしてほしいという思いも込められています。

当日の様子を3期生のようすけとゆうかがまとめてくれましたので、どうぞご覧ください。

植田詩織さんとのオンライン・モーニング・カフェ

報告:山本耀介(3期生) 山藤優花(3期生)

木曜日の朝、2回目の開催となるOnline Morning Cafeには現役のゼミ生のみならず、“0期生”や岸ゼミとつながりのあるメンバーが集まった。

開始時間前に集まった参加者たちが、画面越しに今回のゲストスピーカー植田詩織さんを迎える。それぞれが和やかに自己紹介をし、語り合いが幕を開けた。

現在の活動

 「現在はどんなお仕事をされているのですか?」

ファシリテーターの問いかけからゲストスピーカーの「今」が紐解かれていく。

詩織さんは現在、大阪にある小中高一貫の特別支援学校で、情報科の教員として勤務している。そこに通うのは、車イスの使用や移動の介助など、医療的ケアを必要とする子どもたちだ。

「子どもたちがみんな純粋で本当に面白い!」

今の仕事について、詩織さんは弾けるような笑顔でこう話した。詩織さんの勤める学校に通う子どもたちのほとんどが、高校卒業後は社会に出て、働き口を見つけていくのだという。

「社会に出る時のためにソーシャルスキルを身につける学習をする場なんです。」

詩織さんはこう説明してくれた。小中学校の過程では義務教育のカリキュラムに加えて、自立活動と呼ばれる、子どもたちのために多様な活動ができる時間が設けられているそうだ。そして高校の過程になると、授業内容の自由度はさらに上がる。

「個々を伸ばす教育ができるなって思います。」

詩織さんの話す特別支援学校の様子に参加者も惹きつけられていく。

「学習障がいの子どもはいるのですか?」

と尋ねたのは2期生の堀田さん。一般校に特別支援学級を設けている学校もあるため、学習障がいの子どもがどこの学校に入るかは保護者の一存によることが多いのだと詩織さんは言う。 

「学習障がいの子どもと勉強ができない子どもの差って何かあるのですか?」

質問が続く。詩織さんは臆することなくこう答えた。

「私の中でそこはあまり線引きしていません。」

学習障がいであろうがなかろうが、それぞれの生徒に得意・不得意があるのは当たり前。勉強の仕方だって、書いて覚えるのが好きな子もいれば、見て覚えるのが好きな子もいる。こうした違いを「障がいの有無」という差異ではなく、それぞれの「個性」だと詩織さんは捉えているようだった。

「もちろん医学的には線引きがあるけれど、子どもたちと接する中では単にそれぞれの得手不得手に合わせて教える、ってところを大事にしています。」

詩織さんの言葉に参加者も深くうなずいた。

学生生活

話は詩織さんの学生生活のことへと移り変わる。

詩織さんの学生時代の転機となったのは、大学のゼミに入ったことであった。

どのようなゼミだったのかー「ゼミの縦の関係が強かったですね。」

詩織さんは、ゼミの縦横のつながりを通して、ICTワークショップやフィリピンの子どもたち、そして小児病棟の子どもたちと関わるうちに、子ども達と関わることができる職につきたい気持ちが増していった。

「やっぱり好きなことをするのが一番だね!」

と笑顔ながらに話してくれた。

そこで、こんな質問が出てきたー「なぜ特別支援学校を選んだのか。」

「子どもと一緒に成長できる場だからです。」

詩織さんは力強く答えた。

教育に関わる仕事がしたいと意気込んでいたが、実際に就活をしてみると成績や点数が重視される教育現場に自身のやりたい事とのギャップを感じた。

だからこそ、子どもたちに寄り添える「公教育」を選んだ。

そこからの詩織さんの行動は早かった。

就職活動をやめ、大学院に進学し、教職免許をとった。そして今は、自分の好きな「子どもと一緒に成長できる仕事」をしている。

詩織さんの清々しく力強い話っぷりが、朝の気怠さをもう完全にかき消したところだ。

フリートーク

フリートークでは、詩織さんのこれからの話を含めて、参加者が自分の興味に沿ったことを自由に発言した。

小児病棟の話、障がい者の方の就職先、フィリピンの孤児院、OriHime(オリヒメ)プロジェクトなどなど…

話の流れは変幻自在。チャット欄では話の合間にいろいろなURLが貼られ、そこからまた新たなの話の種が生まれていた。また、『こんな夜更けにバナナかよ』という映画の話で、多くの参加者が「それ見た!」と共感を自由にシェアしている姿に、モーニングカフェの可能性を感じた。

「詩織さんのこれからの展望はありますか?」

最後に、ファシリテーターが質問を投げかける。

「私は、今皆さんと話すように子どもたちに接しています。でも、そのように普通に接することに対して違和感を持つ方も多くいらっしゃるんです。」

「そのような違和感を持つ方達と子どもたちをつなげる磁石のような存在になりたいと思っています。」

詩織さんの言葉から、強いまっすぐとした意志が感じられた。

おわりに

あっという間に2時間が経っていた。誰かのライフストーリーを通して何かを考え、声にして、語り合う。みんなの会話で、みんなが作り上げる時間。名前の通り、まさにカフェのような空間が生まれていた。

学生時代の詩織さんに多くのチャンスを与えた「縦のつながり」がここにもまた作られたようだ。オンラインだからこそできる対話は、これからも新たな繋がりを私たちに与えてくれるに違いない。                 

★参加した学生の感想★

趙秀麟(2期生)

詩織さん!貴重なお話ありがとうございました!詩織さんの明るい雰囲気でみんなも楽しく参加できたと思います!😊色んな質問からでも気軽にわかりやすく答えてくださってありがとうございます!私が通っていた中学校、高校でも学習障害を持ってる子たちと分けられて授業を取っていて廊下でたまに出会うだけで、関わる時間がなかったです。それで、障害を持っている方について深く考えたことはあまりなかったですが、詩織さんのお話を聞いて今まで考えてこなかったことについて考えられる機会になりました。また、大学生時代から今までの詩織さんが歩んできた道について聞きながら、こういう考え方をもってこういう経験を積んでいらっしゃるという人生の間接経験ができて自分の視野も少し広まったと思い、参加して良かったなと思います!ありがとうございました!✨😊

堀田栞菜(2期生)

しおりさんのお話を聞くことで、今までの私の経験がつながっていったように感じました。元々ボランティア先で障害のある子どもと触れ合う機会があったので、私自身も通常学級と特別支援学級が分離されている現状に違和感を抱いていました。障害を持っている人々は純粋で秀でているところもたくさんあって、多くの人がそれに気づけていないことが勿体無いとも感じます。誰でも苦手はあって、それが障害によるものでもそうでなくても、もっと個人が持つステキなこと、得意なことにフォーカスして、苦手なことは一人で抱え込まなくていいよっていう環境を作って行きたいと強く感じました。それを実現するのが学習環境デザインであり、未来の学びがつながる教室だと思います。私自身、岸ゼミに入って人のいいところを見つけるのがうまくなったし、こうして普通に生きていたら会えない人とのつながりを通じて、考えを広げたり深めたりすることができています。こんな岸ゼミのような環境が創発したら世の中変わりそうとも思いました。今日のお話を聞いて「障害のあるないを超えて関わり合える空間を創る」ことを実現したいと思いました。しおりさんがおっしゃっていたように、学校教育の様々な制限の中でできることは限られているかもしれないけれど、行動を起こし続けることの重要性とこの気持ちを自分の中で忘れないようにすることで変えられることがあると思いました。